
認知症に備える、新しい選択肢
台北医学大学の実証研究が示す、認知症支援の新しい選択肢 ― LTPA知能型認知訓練計画
世界では高齢化に伴い、認知症の人が急速に増えています。『2021年世界アルツハイマー病報告書』では、2050年には認知症の人が約1億5,200万人に達すると推計されており、本人だけでなく、家族や社会が担う介護負担も大きな課題となっています。
65歳以上では、慢性疾患、食生活、運動不足を含む生活習慣など、さまざまな要因が脳の健康に影響します。こうした変化は、**軽度認知障害(MCI)**や認知症の危険性とも関係するため、早い段階から認知機能の変化に気づくことが重要です。
認知症における男女差については、脳予備能との関係も研究されています。脳予備能とは、脳に変化や損傷が生じた場合でも、一定の機能を保とうとする力を指します。
一部の研究では、男女によって認知機能低下の現れ方や経過に違いがあることが報告されています。そのため、性別を含む一人ひとりの特徴を踏まえながら、早期から認知機能の変化を継続して確認することが大切です。
台北医学大学の研究:認知訓練による軽度認知障害の高齢者への効果を検証
台北医学大学では、2020年11月から2022年3月にかけて、台湾北部の9か所の地域介護施設から、65歳以上の軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の高齢者を対象として研究を行いました。
研究チームは質問票を用いて、参加者の基本情報や、視覚・聴覚などの感覚機能に関する情報を収集しました。対象者は65歳以上で、臨床認知症評価(CDR)が0.5または1、自立して移動することができ、重い身体障害のない高齢者でした。さまざまな認知訓練を実施し、全体的な認知機能、作業記憶、注意機能、選択的注意、協調性などの変化を評価しました。
さらに、無作為化比較試験を行い、短期の**多領域認知機能訓練(MCFT)**がMCIおよび軽度認知症の高齢者に与える影響を検証し、その後一年間にわたり変化を追跡しました。
無作為化比較試験の結果、認知訓練を行った群では、全体的な認知機能、作業記憶、選択的注意、協調性などに良好な変化が確認されました。また、研究期間中に重大な有害事象は報告されず、訓練後も長期的な変化について追跡が行われました。
台北医学大学の実証研究:LTPAを活用した継続的な認知訓練の可能性
認知機能への働きかけには、認知刺激、認知機能回復訓練、多領域認知訓練など、さまざまな方法があります。
台北医学大学の研究チームでは、LTPA知能型認知訓練計画を活用した多領域認知訓練を実施しました。能力や実施状況に応じて訓練内容を調整しながら脳を継続的に使うことで、MCIや軽度認知症の高齢者の認知機能を維持し、低下を緩やかにする可能性が期待されています。
研究概要
- 参加者:72名(男性17名、女性55名)
- 平均年齡:82.3 歲
- 平均MMSE得点:21点(30点満点)。大部分の参加者には重度の認知障害はなく、多くの参加者がMCIに該当しました(91.7%)。
- 訓練群:記憶力、注意力、協調性を訓練する多領域認知訓練システム(SODA APP)を使用。36名。
- 対照群:音声書籍を聴く、新聞を読むなどの受動的な情報活動を実施。36名。
- 二重盲検設計を採用:参加者は二つの介入のいずれかを受け、自身がどちらの訓練に割り当てられているか知らない状態で実施しました。
一年間の研究結果から、多領域認知機能訓練には良好な効果があることが確認されました。
8週間、週3回、1回30分の訓練を行った結果、全体的な認知機能に中等度の有意な効果が認められ、軽度認知障害および軽度認知症の高齢者において、全体的な認知機能、作業記憶、選択的注意、協調性が改善しました。そのため、このような高齢者を対象とした訓練を地域介護施設に取り入れることは、認知機能低下を遅らせるための方法の一つと考えられています。研究では、地域医療・介護施設で働く支援者が定期的な活動と長期的な訓練を行い、高齢者の認知機能低下を遅らせることを推奨しています。
掲載誌:Journal of Global Health
論文名:Efficacy of multi-domain cognitive function training on cognitive function, working memory, attention, and coordination in older adults with mild cognitive impairment and mild dementia: A one-year prospective randomised controlled trial
軽度認知障害(MCI)とは?
軽度認知障害(MCI)は、正常な加齢による認知機能の変化から認知症へ移行する間の段階とされており、臨床的にMCIと診断された人のうち、毎年10~15%が認知症へ移行するとされています。
軽度認知障害と認知症は、診断や識別の面で多くの共通点があります。軽度認知症では複数の認知領域に影響が及び、日常生活にも大きな支障が生じます。社会的・経済的な観点からも、MCIや軽度認知症の人が日常生活を自立して送る能力をできるだけ維持することは、地域や家族の介護負担を軽減するうえで非常に重要です。
LTPAで脳を活性化し、技術機器を認知障害を支える道しるべに
研究では、中年期以降も認知訓練と筋力訓練を規則的に行うことで、脳の働きを高め、認知障害を予防することにつながるとされています。
「LTPA知能型認知訓練計画」は、専用ソフトと機器を組み合わせ、人工知能(AI)と物のインターネット(IoT)の技術を活用し、高齢者のさまざまな認知機能低下への訓練と筋力向上を支援する仕組みです。これにより、生活の質の維持・向上を目指します。作業療法士(OT)と共同開発した「LTRA知能型認知訓練計画」では、高齢者の訓練の進み具合や実施状況を記録、追跡、分析することができます。
海外の認知症専門家による研究では、指の動きと脳には密接な関係があり、指を柔軟に動かすことが脳の働きにも関係するとされています。LTPAは作業療法士と協力し、IoTとAI技術を組み合わせた認知訓練の解決策を開発しました。知能機器と情報基盤を通じて訓練記録を収集し、療法士の専門知識とAI技術を在宅での利用にも取り入れ、高齢者に一日5~10分程度の脳活性化訓練と筋力向上訓練を提供します。
LTPA知能型認知訓練計画には、Me-SODA認知訓練機、ME-TAKA、ME-SPOZ健康運動習慣支援システムが含まれます。指でボタンを押す動作を通じて、反応力、注意力、協調性、記憶力などを使う七つの訓練方式に取り組みます。これにより、脳への血流を促し、記憶力を高め、若々しい脳の維持を目指します。LTPA知能型認知訓練計画では、標準化された評価と記録分析を行い、認知能力を数値化して長期的に管理することができます。毎回の訓練結果を能力評価の参考として活用し、すべての訓練記録を情報基盤に保存することで、長期的な変化を追跡できます。こうした技術機器によって脳を継続的に使い、その結果に応じて今後の支援内容を調整することで、高齢者一人ひとりの訓練履歴を積み重ね、より健やかで心地よい生活につなげます。

Me-SODA|認知機能訓練機
一日10~15分程度、毎日継続して使用することで前頭葉の働きを刺激します。指を動かして手の柔軟性を保ちながら、毎回の訓練結果を記録し、家族も変化や進歩を分かりやすく確認できます。七つの目と手の協調訓練を備え、一人での訓練と二人での訓練に対応。脳を使うだけでなく、人との交流も促します。

ME-SPOZ|健康運動習慣支援
一曲ほどの短い時間から、無理なく運動習慣を身につけることができます。多様な運動内容で飽きずに体を動かすことができ、SPOZ専用の装着機器で動作を測定。運動の成果を目で確認できます。専門の指導者と一緒に運動を続けることで、元気に年齢を重ねることを支援します。

ME-TAKA|脳活訓練
脳の可塑性に基づいて設計され、さまざまな認知能力を使う訓練課題を収録しています。楽しみながら課題を達成する過程で脳を使い、大きく見やすい単色の幾何図形によって、目への負担を抑えながら認識しやすい設計となっています。遊びを楽しむ感覚で脳を動かし、日々の「脳の貯金」につなげます。
「非薬物治療」と「早期予防の取り組み」という考え方に基づき、AIoT技術を組み合わせ、実証医学と数値科学を基礎として認知能力を数値化し、認知症の状態を長期的に確認します。さらに、一人ひとりに合わせた個別最適な訓練計画を提供し、認知症の進行を抑えることを目指します。認知機能低下や認知障害の危険兆候を早期に知らせることで、認知症の発症や悪化の予防につなげます。